僕は以前から「BNLS注射」の効果を疑っている。
知ってる人も多いとは思うんだけど
BNLSとは「Brand New Liposculpting Solution」の略で
顔や太もも、二の腕などを痩せさせる目的で使用する
注射のことだ。
BNLSに含まれる成分は以下の通り。
1:チロシン(Tyr)
2:アデノシン三リン酸(ATP)
3:セイヨウトチノキ(マロニエ)
4:オキナグサ(アネモネプルサティア)
5:カラクサケマン
6:ペルシアグルミ(α-リノレン酸・Arg・ビタミンE含有)
7:ヒバマタ(海藻)抽出物
チロシンは単なるアミノ酸、ATPは代謝におけるエネルギー源。
セイヨウトチノキ、オキナグサ、カラクサケマンは抗炎症作用をもつ。
ペルシアグルミ、ヒバマタ(海藻)抽出物には代謝機能促進作用がある。
(なお、一部サイトにはヒバマタ(海藻)抽出物に
脂肪を直接的に分解する作用があるかのような記載があるが
僕が論文を読んだ限り、ヒバマタ抽出物そのものが
脂肪を直接分解する、などという記述は
どこにも見つけることができなかった)
(ちなみにヒバマタ抽出物がコラーゲン前駆体である
プロコラーゲンⅠの生成を促す、という記述はあるが
脂肪の分解とは関連はない)(Al-Bader et al., 2012)
要するにBNLSには脂肪を直接分解するような成分は
全く含まれていないわけ。
*もしこの記事を読んでいる方で、
「ほぴぃは何言ってやがるんだ。
この成分には脂肪を直接分解する働きがあるんだぞ!」
っていう方がいましたら、教えて頂ければ幸いです。
ただし、その場合は必ず論文を提示し
どこにその根拠となる記述があるのかを
明確に示してください。
(インパクトファクターがある程度高い
学術誌に掲載された論文が望ましい)
以上のことから、科学的見地に立って考えると
BNLSを顔に注射したとしても
脂肪を溶かしたり、脂肪細胞を直接破壊することは
あり得ないと断言できる。
すなわち、もしBNLSを使用して
「顔が痩せた」のであれば
それは脂肪細胞が破壊されたのではなく
顔についている脂肪の代謝が促進されたことになる。
ちなみに最近(数か月前)「BNLS neo」という
上記の成分に「デオキシコール酸」を追加した
新商品が登場したみたいなんだけど
これに関して1つ注意点がある。
この「デオキシコール酸」については
「新成分なんです!すごいんです!」
みたいなことが
よくクリニックのホームページに書かれているんだけど
実はデオキシコール酸は昔から脂肪溶解注射に含まれている
ありきたりの成分なのである。
確かにデオキシコール酸には脂肪細胞を破壊する
働きがある。
だが、もし仮にこのデオキシコール酸により
顔の脂肪細胞が破壊されたとすると、
確実に顔は腫れ上がることになる。
「えっ?何でそんなことが言えるのか、だって?」
そんなの当たり前だ。
生物においては脂肪細胞が損傷を受けると
プロスタグランジン(PG)が遊離し
同時に好塩基球や血小板からヒスタミンが放出される。
このヒスタミン(およびキニン)の
働きにより血管拡張がもたらされ
炎症が引き起こされるからである。
さて、ここで、重要なことは
「BNLS neo」は注射してもほとんど腫れない
(炎症を引き起こさない)ということだ。
「あれ?BNLS neoにはデオキシコール酸が
含まれているはずなのに何で腫れないの?」
と思う方もいるだろう。
その答えは簡単だ。
BNLS neoには
デオキシコール酸が極めて微量しか含まれていないからだ。
ここまで書けばおわかりだろう。
BNLS neoはこれまでのBNLSと
比較したら多少効果はあるのかもしれないが
やはりその効果は期待できるほどの
ものではないのである。
ちなみに、もし僕が「顔の脂肪をなんとかしたい!」
って思ったなら、リスクがあることを承知で
別の方法を試すことになるだろうけど
それについてはまた今度書きたいと思う。