朝起きて、鏡で自分の顔を見た。
「あれ?鼻の手術前と比べて、
輪郭がほっそりしているように見える・・・」
そういえば鼻整形のカウンセリングの際、
美人なカウンセラーさんがこんなことを言っていた。
「鼻がきれいになると、顔に立体感が出て、
輪郭が細く見えるようになるんですよ」
どうやらその話は嘘ではなかったようだ。
さて、今日から職場に復帰するわけだが
これからの行動が重要になってくる。
僕は昨日、つけ麺屋を出た後に買っておいた
「マスク」を取り出した。
このマスクはドラッグストアで
よく売られているものだが、
耳ひもが不織布になっている、という特徴がある。
これを装着することで
耳の傷を完全に隠すことができるのである。
これさえあれば職場では何の問題もない。
なぜなら、僕は医療従事者であり、
マスクは普段からよく使用しているからだ。
問題なのは「家の中」だ。
さすがに、家の中で親と顔を合わせる時にも
四六時中マスクを着用していては
怪しまれること必至だ。
マスクを着用している時の僕は
まさに無敵状態だと言えるだろう。
スターを手に入れたマリオは
「クリボー」であろうと「パックンフラワー」
であろうと体当たりで蹴散らすことができる。
しかしその効果は長くは続かない。
一度マスクがはずれてしまえば、そこはもう「戦場」
「背後」をとられれば、
待っているのは「死」に他ならない。
では、どうする?
答えは簡単だ。
「背後」をとられなければいいのだ。
僕は決意した。
親と対面する時は絶対に後ろ姿を見せない、
ということを。
だが、このミッションには相当な精神力を要する。
いつまでも続けられるものではない。
そもそも、耳の傷で問題が生じるのはなぜか?
それは僕の髪が短いからだ。
もし僕が女性で、髪が耳にかかっていたとするなら
耳介軟骨移植の際に生じる傷など些細な事なのである。
だから僕は傷の治りを待つだけではなく
髪を伸ばすことに決めた。
傷を隠せるぐらい髪を伸ばすには
かなり時間がかかるかもしれない。
だがやるしかない。
そんなことを考えつつ、
久々に職場に顔を出した僕だったが
マスクを着用していることもあって、
誰1人として鼻の変化に気付く人間はいなかった。
ちなみにマスクには「鼻・耳の傷を隠せること」以外に
もう1つ大きな利点があるのだが、
それについては次回の記事で触れよう。
つづく