僕は歩いていた。
長い、長い、川沿いの道を歩いていた。
いくつの橋を越えたのだろうか?
わからない。
まっすぐ。
ただひたすらまっすぐに。
地下鉄の駅が見えた。
「戻ろう」
ホテルへと戻った僕は軽く身支度を整えると
病院へ向かった。
病院では通訳さんが待っていた。
処置室へ案内される。
しばらくして先生がやってきて僕に言った。
「これから抜糸を行います。
痛くないので安心してください」
「痛くない」と言われても、
どうしても身構えてしまう。
輪郭整形の抜糸が痛すぎて
“泣いた”経験があるからだ。
先生は僕の顔に貼られたテープをはがしていき
鼻の穴付近にある黒い糸を
ハサミのような器具を用いて切っていった。
「パチッ」「パチッ」「パチッ」
一体どれだけたくさん糸で
縫われていたのだろう。
数えきれないほどたくさん糸を切り、
傷口から糸を除去していく。
鼻の穴付近だけではない。
穴の中にも糸はあるし、
右耳の傷口も糸で縫われている。
糸を切り終わった後も先生は念入りに
残っている糸がないかどうかを確認していた。
「痛くなかったですか?」
そう聞かれた僕は言った。
「ケンチャナヨー(大丈夫です)」
僕が突然韓国語を発したものだから
先生と通訳さんは爆笑していた。
先生は僕に手鏡を渡して言った。
「まだ鼻先と目と目の間が大きく腫れています。
完成するまでまだ時間がかかるので
ぶつけたりしないでください。
あと毎日寝る時にテーピングを
行うようにしてください」
先生から教わったテーピングの方法を
忘れないように記憶する。
その他の注意事項についても
いろいろと丁寧に説明をしてくれた。
僕は通訳さん、先生、受付の方に
感謝の気持ちを伝え、病院を後にした。
ホテルに戻って鼻の様子を確認してみる。
左が手術前、右が抜糸直後
先生が言うように「鼻先」「目と目の間」が
まだまだ腫れている感じがする。
ただ現時点でも、鼻の形状は変化しており、
鼻の穴が見えにくくなっている。
そして気にしていた「寄り目」についてだが
ギプスを固定していたテープがはずれたことで
目は元に戻っていた。
とりあえず失敗ではなさそうだ。
安心したらお腹がすいてきた。
「ギプスが外れたことだし、記念として
美味しいものを食べに行こう」
僕は明洞に向かった。
入ったのは
「ハムチョ・カンジャンケジャン」というお店。
ケジャン(ワタリガニの醤油漬け)で有名なお店だ。
ギプスが外れたことによる解放感もあって
生まれて初めて食べるケジャンは
とても美味しく感じられた。
明日は日本に帰る日だ。
だが、やるべきことは多い。
僕はホテルに戻る道中で明日の日程について
頭の中で考えていたのだった。
つづく