空港で入国の手続きや税関での申告
(1万ドル以上の現金の持ち込みがあるため)
を終えた僕は前回カウンセリングに来たときと同様に
空港鉄道と地下鉄で明洞へ向かった。
ここで通訳さんに教えてもらった
両替屋さんに立ち寄る。
百数十万円もの現金を大韓民国ウォンに
両替するわけだから、少しでもレートの良い
ところで両替しなければならない。
お店の人に札束を見せたところ
驚いた様子で
「too much(多すぎる)」と言われた。
それなら、金額を減らして両替するしか
ないかなぁと思っていると
「しばらく待つように」との指示。
どこかに電話をかけはじめる店員さん・・・
待つこと3分ほど
「OK」と言われ、結局全額両替することができた。
ちなみに明洞駅にはエスカレーターが
設置されているが、
一部の場所では階段しかないので、
重いキャリーバッグを担いで
持って上がらなければならず、かなりキツかった。
苦労しつつも、お昼過ぎに病院がある駅に到着。
病院の予約時間まであと2時間近くあるので
しばらく地下鉄のホームに設置された
椅子に座って待つことにする。
それにしても体調が悪い。
寒気がして頭がぼーっとする。
どうやら熱があるらしい。
病院からのメールによる連絡事項には
「手術2週間前からはアスピリン系の薬は
中止しなければならない」と書かれていた。
僕はしばらく考え
日本から持参した解熱鎮痛薬
「タイレノール(アセトアミノフェン)」を
1錠服用した。
手術前にアスピリン系薬剤の服用が
禁止されているのは
「血小板凝集抑制作用」があるために
出血がとまらなくなってしまうからである。
アセトアミノフェンには
「血小板凝集抑制作用」はない。
薬は飲まないのがベストだが、
服用しても大きな問題はないはずだ。
薬を飲んでしばらくすると
多少体が楽になったような気がした。
僕はこの時かなりテンパっていたので、
とにかく冷静になろう、と心掛けた。
「今のこの状況はマズい。
どうするのが最善なのか?」
10分ほど考え、結論が出た。
「予約の時間とかはどうでもいいから
まずは病院へ行くべきだ。
病院に行って通訳さんに事情を説明し、
手術を受けることができるかどうか聞こう。
それに病院で休む方が体にも良いはず」
僕は病院へ行って事情を説明した。
通訳さん曰く、手術前に行う検査で
問題がなければ手術できるとのこと。
しかし、僕の頭はどうにかなりそうだった。
「果たしてこの体調で全身麻酔を伴う
大手術を乗り越えられるのだろうか?」
「この異国の地で僕は最期を迎えるのかもしれない。
みんな、さようなら・・・(´;ω;`)」
冗談抜きでそんなことばかり考えていた。
病院のソファーに座ってとにかく体を休ませる。
予約時間の15時が近づいてきた頃、
僕は賭けに出た。
もう1錠アセトアミノフェンを服用したのである。
手術を行うためには絶対に
発熱だけはあってはならない。
「手術さえ受けられれば
後はどうなっても構わない」
ぼーっとする頭でそう考えた。
時間になり通訳さんと一緒に上階へ。
個室に案内され、そこで着替えを行う。
着替えた後、看護師さんがやってきて
体温計で熱を測った。
薬が効いているためだろう
熱はないようだった。
ちなみに「薬を飲んでます」なんてことを言ったら
手術が中止になる可能性があったため
秘密にしておくことにした。
別の部屋に案内され待機していると
先生がやってきた。
先生に前回のカウンセリングの際に話したことを
もう一度説明し輪郭のデザインの確認を行う。
先生は僕の顔に
マジックで線を描き入れていった。
それが終わると、先生は言った。
「大丈夫です。私に任せてください」
「はい、よろしくお願いします・・・」
僕は弱々しく返事をして、
手術室がある階へと連れていかれた。
その階にあるトイレで顔を洗った後、
エアシャワーを浴びて手術室に入る。
手術台の上に横になり次から次へと
体中に器具を取り付けられた。
そして腕に点滴をつけられ、
通訳さんが言った。
「今から少し眠くなりますよ~」
それが手術前に僕が聞いた最後の言葉だった。
僕はおそらくほんのわずかな時間で
完全に意識を失った。
つづく